「特典」について

一昨日くらいにツイッター上であるバンドのCDリリースに関し、ある大型店が本人達の承諾無しに特典を決めたのではないか、との問題が流れましたが、結局誤解でそのお店には問題なし、ということがありました。
 部署違いとはいえ、その大型店のある方からも直接事情説明の電話をいただき、反射的に反応してしまったことを改めて反省しております。
 しかし、「特典」についてはやはりいろいろ思うところは沢山ある。

 そのお店で買えばそこでしか手に入らない「特典」がつく、それは未発表曲だったり、未発表映像だったり、ミックス、マスタリング違いだったり。

 お店がそうしないとやっていけない事情もよく分かる。そうやって薄い購買層を取り合わないといけない今の情勢も死ぬほど分かる。

 しかし作る方から言えば「特典」をつけたからと言って売れる枚数が増えるかといえばはっきり言ってそうじゃないのだ。

 特典をつければそのお店での最初のオーダーは増やしてくれる。

 在庫を持てない(持ちたがらない)お店は最初のオーダー分でがんばろうとしてくれる。
 最初に沢山入荷してその勢いで短期間で沢山売ろうとしてくれる。でも最初しか売れないのだ、そのやり方では。

 だから「特典」をオーダーされることになるのだけど、でも作る側から言わせてもらえれば、スタッフの方が本当に良いと思えるものを長い期間をかけて地道に売ってもらえればその方が大きな売り上げに繋がるのではないかと思う。

 そう思ってるスタッフの方も沢山いるだろうとは思うが、今の状況はそれを許しませんよね。それもよ〜くわかる。

 だからこその「特典」なんだろうけど。でもお店で買う本当の特典は「新しい出会い」だと思うんですよ。お店のスタッフの方に勧められて全く新しい知らない世界に突入する、これこそ本当の「特典」だと思うし、お店まで行って買う動機にもなるし、事実経験上新しい音楽との出会いは良心的なお店があったからこそだった。

 ネット・ショップでも同じようなことはもっと出来ると思う。簡単なお勧めや「これを買った人はこれも買いました」的なリストアップ以上のことはまだまだ出来ると思うし、一部のネットショップではSNS等を活用しそういうことをすでにやっているところもある。

 「特典」を求めるお客さんの気持ちもよく分かる。自分でも今まで特典目当てだったこともあるし。しかしいつの間にか「特典」なんかどうでも良くなった。 

 それは、「特典」にする音源はそもそもそのCDには納めることはなかった(しなかった、できなかった)ものだ、ということ。
 つまりはその時点では発表するつもりがないものだったと言ってもいい。

 やっぱりどうしても「つけたし」でしかない。ボーナス・トラックが浮いて聴こえる時があるけどそれと同じことかな。

 良いCDがそれ1枚でちゃんと成り立っているとき「特典」は「余計」なものにしか聴こえないときがある。だから特典だけ段々聴かなくなる。

 F.M.N.でも今まで音的な特典をつけたことがありましたが、それはいつも断腸の思いでつけてる。良いテイクならば「これはいつかちゃんと発表した方が良いのではないか」、収録から外れた曲ならば「これを発表して良いのか」、どちらにしても出したくて出してるんじゃない。

 穂高さんの「ひかるゆめ」も特典をあるお店からオーダーされましたが、結局断りました。

 CDに収録しきれなかった2曲がありますが、それを特典にするかどうかちょっと迷った。
 しかしちゃんと録音した曲であり、且つCDの流れの中でしょうがなくカットした曲であり、出来としては他と全く遜色がない2曲、これはいつかライヴ録音した曲と一緒に安価のCD-Rかなにかでちゃんと売っていこう、そう穂高さんと相談しました。

 やはり「おまけ」を作ってるんじゃない、という気持ちは作る方としてはありますね。

 ディスクユニオンの日本のロックインディーズ館で「ひかるゆめ」が売り上げ11位に入ってるとのこと。何の特典もないのに沢山売っていただいて大変感謝してます。

 これは、内容さえ良ければ「おまけ」なしでもずっと売れていくのだ、それを示してるとそう思いたいんですけどね。甘いかな。

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