浦 朋恵/Rockin’ at the 1,000,000 Restaurants

 全然関係ない話し方から始めるけど、昔々両親がダンスホールをやっていたことがあるらしい。


 「らしい」というのは生まれる前の話だから。何度も職業を変えていたらしい父親の気まぐれで始めたと思うが、少なくとも記憶にある限り音楽に興味があるとは思えない両親がダンスに一時期でも凝っていたということは不思議な感じがする。
家族全員、写真で記録を残すと言うことにまったく関心がない変な一家(実家にはアルバムすらない)なので当時の写真もない。
 
 うっすら記憶にあるのはその跡地を人に貸してパチンコ屋だった頃。
 そのパチンコ屋もつぶれ物置代わりに使われていた頃ははっきり覚えている。

 その物置にはダンスホールで使っていたと思わしきミラーボールの残骸や、ダンスのSP盤やレコード、ダンスのステップ本が沢山転がっていた。他にもいろいろ面白そうなモノが沢山あったから小さい子供にとっては夢のような遊び場所だった。

 大っきな(いわゆる家具調というやつ)プレイヤーでそのSP盤(昔のプレイヤーは78回転もいけてた)やレコードを意味もよく分からないダンスステップの本を見ながら良く聴いていた。

 ルンバやマンボって書いてはあるけど、それがなんのことか分かるわけもなかったが、なんか聴いてて楽しかった。
 この音楽でミラーボールの光の中、誰だか知らないみんなが楽しそうに踊ってる光景が目に見えて楽しかったのだ。ちょっとした大人の世界を見るような感じもした。

 昔々、音楽は一人で聴くモノじゃなくて沢山の「みんな」で楽しんでた。今のようにヘッドフォンで一人一人がそれぞれ音楽を自分の楽しみにしてるのもそれはそれで一つの楽しみ方だとは思うが、個人で楽しむという発想すらなかった頃の音楽って今聴いてもなんか無条件で楽しい。

 配信がどうのとかスピーカーでで聴け、とか言ってるじゃないですよ。ただその頃の音楽は沢山の人が一緒に同じ場所でみんなで楽しんでもらいたい、と思って作ってたと思う。

 音楽を作るときの動機が最初から今とは全く違うような気がするんですよ。

 で、ようやく浦さんのCDのこと。

 浦朋恵さんの初リーダー・アルバム。とにかく楽しい。すごく楽しい。音楽をやってるそもそもの動機が昔のダンスホールで流れていた音楽と同じような気がする。
 
 音楽を作る動機自体が今の多くの音楽とは全く違うような気はする。

 なんだか、みんなで聴きたいなー。一人じゃもったいない。喫茶店(カフェじゃなくてね)や飯屋で流れていてもいい。

 決してノスタルジックな音楽ということじゃない。今の音楽であるのは間違いない。でも今の誰も考えていなかったか忘れていたような楽しさ。

 すごくいいです。
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中尾勘ニ(ストラーダ、NRQ、NEWDAY)、牧野琢磨(NRQ)、船戸博史(ふちがみとふなと)、を基本コンボに、浜野謙太(サケロック、NEWDAY)、伊藤大地(サケロック)、森雅樹(エゴラッピン)、チチ松村(ゴンチチ)、富樫春生らが曲ごとに参加し花を添える。Lynn HopeスタイルのR&Rや、R&B、ポップ・ジャズ、さらには辺境インストにクレズマーまで、ほぼインスト・アルバム。全14曲。ムッシュかまやつも特別参加。
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