昨日は浅草アートスクエアで大友さんのダブル・オーケストラを。
このオーケストラ、2つの楽団が同時に演奏するオーネット・コールマンのダブル・カルテット、演奏技量に極端な差のある人たちのオーケストラであるポーツマス・シンフォニア、コンダクターのサインによって進行するブッチ・モリスのコンダクション、といった既存のアイデアの寄せ集め的なものにならなければいいが、と余計な心配をしていた。
結果的にはそのどれとも決定的に違う、まったく新しい形の集団演奏としかいえないものでした。
そりゃあね、最初だからうまくいかないところも多々あったようには思えるけど、そのうまくいかないところもおもしろい。これから先発展していく可能性がすごく見えるという意味で。
まず、コンダクターと演奏者との関係。
ところで多くの人がジョン・ゾーンのコブラとの相似性を指摘していたけど、コブラは集団での即興演奏を詳細なルールによるゲームで構築し直そうとしたものだから、基本的には今までの即興演奏の枠組みをそう大きく離れるものではないと思う。
コンダクターではなくあくまでプロンプターだし、演奏者にも拒否権やスパイといったシステムを組み込むことによって演奏を構築する大きな権利が与えられている。
だからこのダブル・オーケストラとは基本的なところで全く違ったものだと思います。
このダブル・オーケストラではコンダクターと演奏者の関係が大変おもしろい。
演奏者の技量の差がそのままコンダクターの指揮に影響を与えている。
ロング・トーンひとつとってもまるっきり安定しないものだからコンダクターの意図するものとは全く違ったものになる。だからそのロング・トーンにならないロング・トーン(?)で演奏を構築していかなければならなくなる。
これってある程度技量のある演奏者ばかりのオーケストラでの、演奏者からのコンダクターへのフィード・バック(例えばコンダクション)とはまるで違うものだと感じた。
そのロング・トーンにならないロング・トーンが100人もいれば相当面白い響きになるのよ。
濁ってるわ(だってチューニングしましょう、と言われてもちゃんとしたチューニングすらできていなかった人がたくさんいた)息は途切れるわ、音程は安定しないわ、そういう楽器の音も含めた100人の音のなんと魅力的だったことか。今まで聴いたことのない種類のノイズ。
ブッチ・モリスのコンダクションのような、あらかじめ相当の技量のあるミュージシャンをそろえ、そのそれぞれを自分の楽器と見なしたかのような即興演奏なんて最初から無理、ということになる。
コンダクターも楽器を持たない一演奏者。コンダクトしてるうちに素人も交えたオーケストラに自然と逆にコンダクトされている様が(演奏してる方はそんなことはまったく意識してないのがいちばんおもしろんだけど)ありありとわかる。
とにかくおもしろかったなー。すごく久しぶりに今まで見たことも聴いたこともないものに出会えた感じ。
うまくいってない所ももちろんたくさん見えたけど、それも含めこれから先どういう風に進化していくんだろうと思ったら楽しくなった。
しかもその進化の幅が大きそうな気がする。